みんなが育児を考えるきっかけに
2020.07.20
2020年7月15日から1年間、江崎グリコ株式会社が液体ミルクを多胎児家庭に専用価格で提供する支援がスタートしました。
ぼくたち、NPO法人つなげるでも、江崎グリコ株式会社・日本多胎支援協会に協力する形で、全国の多胎児家庭を対象とした連絡窓口として参画することとなりました。この文章では、多胎に限らず子育てに関わる皆様に、NPO法人つなげるの本支援における考え方をきちんとお伝えできればと考えています。
◆ 母乳代用品のこれまでを知るきっかけに
ぼくは、最近までこの2つのキーワードを知らなかったです。
『WHOコード』
<https://bonyuikuji.net/wp-content/uploads/2013/05/International_code.pdf>
『森永ヒ素ミルク中毒事件』
前回の液体ミルク48,000本物資支援・今回の1年間多胎児家庭支援に、NPO法人つなげるとして関わることがなかったら、きっとずっと知らなかったです。この2つのキーワードを人に説明できるまで、深く理解し切れていないのですが、「こういったルールや事件があったんだ」「こういうことを念頭において活動をしている人たちもいるんだ」ということを知った上で、ぼく自身も活動をいま実施しています。(この2つは、当法人の代表理事から教えてもらいました)
ぼくには、2人の子どもがいます(双子ではないです)。ほぼ完全母乳で育てて、粉ミルクをつくったこともほとんどなければ、液体ミルクも購入したことがなかったです。(むしろ液体ミルクの存在は知らなかったです)だから、授乳に関して、ぼくは全く育児参加をしてきておらず、覚えていることはゲップを出させないといけないということだけで、一向にマスターすることなく、ぎこちない所作のまま、授乳期が過ぎました。(いろんなママたちを敵に回したかも。。)なんで完母で育てようと思ったのか、授乳がどれだけ大切なことなのか、ってことに真剣に向き合ってこなかったから、この2つのキーワードに触れることがなかったんだと思います。(本当に知らなかったことが恥ずかしい)
◆ 『育児を、みんなで育てよう』
そんなぼくがひょんなことから、多胎育児の支援に関わるようになり早や4年。この4年間で、いろんな多胎ママ・パパたちから話を聞く機会がありました。そこで、ぼく自身が思った育児環境の問題は、「育児を休憩するために、お金を使うことは良しとされていない」です。これは、多胎育児に限らずだと思います。
自分自身、育児に関しては(いい言葉を使うと)かなり脱力系で、子供の自由で健全な成長を妨げなければオールOKという感じ。だから、「世間のこうすべきだ」というのは耳に入ってこないし、「普通」という言葉も元々嫌いだし、楽しく子どもと一緒に成長していければいいやん、って。でも、ぼくのパートナーはそうではなくて、やっぱり「こうすべき」「普通」っていう言葉に多少引っ張られている。なんか社会全体でも、そういう風潮があるんだなっていうことを、多胎育児に関わるようになってから徐々に理解してきました。
「なんでだろう?」って思ったのが出発点、そしてそれを変えたいと思っているのが現在、変えるためのきっかけにしていきたいのが『育児を、みんなで育てよう』というNPO法人つなげるとしてのキーメッセージです。
◆ 育児を休憩するために、楽してもいいんだ!
今回の、液体ミルク多胎児家庭支援は、液体ミルク市場を拡大したいというものでもなければ、液体ミルクを育児に積極的に取り入れて欲しいということでもないし、液体ミルクにフォーカスした事業活動を展開したいと思っているわけではないです。「しんどい時は、これを頼ろう」という選択を、いろんなママたちが自由に選べる社会にするためのきっかけとして、今回の1年間多胎児家庭支援が有効に働けばと思っていました。
「液体ミルクを有効活用できて、休める時間が取れた」「便利なものがあってよかった」という成功体験を、ママだけじゃくて、パパや家族・友人とも共有して欲しい。その積み重ねが、ぼくが問題として捉えた「育児を休憩するために、お金を使うことは良しとされていない」という部分を変えていける原動力にもなるし、『育児を、みんなで育てよう』の第一歩になるんだと信じています。
きっと「液体ミルク」の使用に関して、この支援について、ポジティブな声・ネガティブな声に、この1年間でいろいろなところで見るようになるかもしれません。もしかしたら不安になるかもしれません。そんなときは、ぜひNPO法人つなげるに問い合わせをして欲しいです。ぼくたちは明確な答えを持ち合わせていないけれど、あなたとあなたの育児を考える時間を持っています。いろいろな意見を出してくれるピアサポーターたち、オンラインコミュニティの場所もあります。
『育児を、みんなで育てよう』を叶えるには、あなたが抱えている問題や工夫が必要です。あなたのお子さんたちが子育てをするときに、あなたが抱えた問題と同じことを抱えないように、「こうしたかったな」という後悔を次世代に渡さないように、みんなで一緒に叶えていきたい。
まずは多胎家庭の授乳シーンから。
2020年7月18日
大野祐一(NPO法人つなげる 専務理事)