全国オンラインでつなげる「ふたごのまち」
2020.07.15
このプロジェクトを開始するに至ったこれまでの経緯、これからの多胎支援でわたしたちが目指し・願っていることなどです。出来事はすべてこの数カ月のお話しですが、大切にしてきたものはこれまでからも変わらない。
すこしでも目指す場所へ近づけるよう、多くの方の力をかりながら進んでいきます。
◆ 何にこまっているのか、みんなの声を聴きたい
ニュースでダイヤモンドプリンセス号の乗客が下船できないというニュースが毎日のように流れていた。「よくわかんないよなぁ」ってなまじ他人事のようにおもってみていた。あれから5ヶ月後、わたしたちを取り巻く社会がこんなにも制約のある生活を強いられるとは思いもしなかった。
我が家の双子が通う小学校から、突然の休校連絡。仕事の調整が大変だった。ただ、それは大変だなぁというレベルで、心が締め付けられるような窮屈さを強いられるようなものではなかった。
ただ、当時わたしが気になったのは、体力ありあまる幼児をかかえたママ達や、ワーママで預け先のない小学生ママ達のことだった。
「まずは何にこまっているのか、その声を聴きたい」
正直、YES・NOでこたえられるアンケート項目なんてなんだっていい。わたしが知りたいのは、「あなたがいま置かれている状況で、何に困り、何に焦り、どうやってこの困り事を解決しようと動いているのか、それとも途方にくれているのか」ということだけだった。
だから、アンケートをすぐにスタートさせた。
毎日、すごい文字量で書き込みが入ってくる。その言葉一つひとつに動揺してしまう自分がいて、軸をしっかり保つのが大変でした。
『もうだめだ。このままアンケート締切まで待っていられない。すぐになんとかしなければ。』
そう思ってしまったのは、当初想定していた幼稚園や小学校に通うママたちからの悩みよりも、乳幼児(保育園児も含む)のママからの悲痛な声が多く寄せられたからです。
◆ 孤軍奮闘しているあなたの存在を知っている
このアンケートをスタートするにあたり、助言いただいていた育て上げネットの工藤さんと奥さんへ連絡。
こんな悲惨な状況になっている。一体わたしたちに何ができるのだろうかと、アイデアを出し合いました。
コロナの状況下では直接支援は難しい。直接支援以外でなにかできることはないか・・・
そこで、「まずは『ママが休めることを応援する』をやっていこう!」と旗をたてました。
それで実施したのが、「Amazonほしいものリスト」に物資をUPし、寄付者に購入してもらい、代表の自宅へとどいた物資を、必要とするご家庭へお届けするという取り組みでした。
物資の一つひとつに意味がありました。
紙おむつは、購入制限で双子分の購入ができず、あの状況下で双子ベビーカーを押して薬局を渡り歩かねばかえないママへ届けたい
離乳食は、手抜きすることに後ろめたさがあるママへ、休んでいいんだよというメッセージを伝えたかった
絵本は、引きこもりがながくておもちゃも飽きてしまった子どもたちに、ママといっしょに絵本を楽しむ時間を届けたい
そして、この全ての物資をささえてくれる人たちから「いま孤軍奮闘しているあなたの存在を知っていますよ。応援していますよ。」と、決して独りではなく、つながりのある社会にいるということを伝えたかったんです。
◆ 全てを投げ出したくなる前に、しゃべりにきてほしい
そして、これと並行して「ママが休めるよう『心の安定を図る』」ことを目的に、9時間無料オンライン相談窓口の開設もスタートさせました。
わたしたちはこの活動を当初「ホットライン」と呼んでいました。
「もうだめだ」と全てを投げ出したくなる前に、しゃべりにきてほしい。
大人としゃべりたいっていう理由だけでもいい。
だれかに嬉しい事をきいてもらいたいってのもいいよね。一緒に喜ばせてね。
愚痴だってここなら外にでないから安心してね。
ふたご育児のあれこれだって、これまで通ってきたちょっとだけ先輩のわたしたちへ気軽にきいてね。
そんな気持ちを持ちながら、すすめた2か月でした。
この活動も、思い立ったらすぐにスタートしたのですが、わたしひとりでは立ち行きません。
このとき二つ返事で賛同してくれた3人の双子ママが、わたしの思い付きを支えてくれました。
いまでは、つなげるピアサポーターさんとしても活躍してくれています。
そしてこの活動は、「おしゃべりのへや(無料)」と名前をかえ週2~3回と不定期でいまも続けています。
◆ 「ありがとう」の声を沢山いただいた
コロナ対応で忙しく活動をしているころ、江崎グリコさんから液体ミルク48,000本の物資寄付のお話しをいただきました。
このお話しは、わたしも理事をつとめる一般社団法人日本多胎支援協会で液体ミルクの調査に協力したのでつながりが以前にできていたからです。
長引くコロナ自粛でみんなも疲れがたまっている。ましてや、このコロナの影響でこれまでお手伝いに来てくれていた人が来れなくなったり、県外にいる実母が手伝いにこれなくなったという話もきいていた。
この液体ミルクをせめて夜中の授乳にあてることで、少しでも負担感が軽減されるのではないかと考え、後先考えず「やります」って返事をしていた自分がいました。
ただ、ここからが大変(笑)
手伝ってもらうために人手をかりることができない。実質動けるのは3人だけ。かかる経費も含め一切どこからの援助もない。
さぁどうしよう。どう組み立てよう。つなげるの運営メンバー3人でかんがえました。
そして、できたのがこれ。
つなげるピアサポ講座で講師もつとめてくれている双子ママは、ガムテープを買い込んで手伝いにきてくれました。
最後のほうでは、広い場所で作業ができたこともあり、マスクしながらお手伝いに駆けつけてくれた双子ママもいました。
ミルクを引取にこられたママパパから、おやつや飲み物、栄養ドリンクの差し入れもいただきました(笑)
みなさんから「ありがとう」の声を沢山いただいた「アイクレオ液体ミルク応援物資プレゼント」でした。
長くなりましたが、以上が今日まで活動してきた流れです。
正直、行き当たりばったり感が満載ですが、でも大切にしていることだけは変わらない。
それは、「命の誕生を当たり前に喜べる社会へ」
この「命の誕生」は、赤ちゃんのことだけじゃない。
ここに生きている私たちが「命がいまここにあることを喜べる社会」でありたい。
これが叶えられるのなら、なんだってチャレンジしたい。
でも私たちだけではできない。
だから
「育児を、みんなで育てよう」を伝えていきたいとおもう。
孤育てから子育てへ。
◆全国に点在する多胎家庭をオンラインでつなげる「ふたごのまち」スタート
本日発表したグリコさんとの取り組み。
多胎ネットさんがある地域は安心なのですが、整っていない地域の方が多いのが現状です。
当初は、「ふたごのいえ」だけでの取り組みにする予定でしたが色々な事情がかさなり、わたしたちでお引き受けすることになりました。
そうと決めたら次にすることは決まっている。
「NPO法人つなげる」が全国のおっきな多胎サークルのようになって、誰一人取り残されないネットワークを築きます。
これまで孤立していた多胎家庭を、街単位、自治体単位、県単位
なにかで必ずつながれるようにしていきます。
あなたをひとりにはしない。
オンラインでつながれるから、急な転勤になったって不安はないよ。
なにかあれば、LINEをちょうだい。
しゃべりたいときは「ふたごのへや」
管理入院中の不安だって、ここなら話せる人や経験済みの人がいるのが「ふたごのいえ」
NPO法人つなげるは、まるっと「ふたごのまち」をオンライン上でつくっていきます。
◆ あなたらしくいれる場所のひとつになりたい
最後に・・・
わたしは、役割を担ったからといってあまりにも窮屈な場所に押し込められていい理由なんてなくって、しんどければしんどいと助けを求めてもいいと思っているんだ。
「ママだったらこうしなくっちゃ」と、自分がおもう役割に縛られて、自分自身を追い込まないでほしい。
もっと自分を可愛がってあげていいとおもう。
わたしは、周囲と双子特有の子育ての悩みを話せる人がいなくて孤立したことで孤独だったし、手が足らなくて人手がほしかったし、自分のしんどさを家族に知って欲しかった。ひとりで戦えといわれているような、この閉じ込められたような子育てと、なにをどう自分ががんばっても予定どおりにすすまない乳幼児のお世話(当たり前だが)に無力感をつのらせていった。
「どうせがんばっても、全部だいなしなんだよなー」って思うこともいっぱいあって、自分ってなんて無力なんだろうって思う事もしばしばあった。いつかひどい虐待行為に走るんじゃないかと自分がこわかった。
だから、外へ出て誰かとたわいもない話をするだけでもいい、できれば助けてほしい困っているんだと伝えてみたいし聞いてもらいたと思った。
ただ、やみくもに外へでても、思ったような人には出会えないし、出会えたとしてもそんなに時間を割いてもらえるわけじゃない。
誰かに話をきいてもらいたくて、心理カウンセリングに通ったこともあった。その方が、守秘義務もあって安心してなんでも話せるからね。
話せる人、自分が逃げ込める場所、安心できる場所、温かく自分を迎え入れてくれる場所
あなたにとってあなたらしくいれる場所がないのなら、つくってほしいなって願っています。
そして、その場所のひとつにわたしたちがなれるなら、とてもうれしいです。
2020年7月15日
代表理事 中原美智子
江崎グリコー多胎児家庭支援「液体ミルク」に関して |
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NPO法人つなげる NPO法人つなげる 『命の誕生を当たり前に喜べる社会に』が、最終的に目指していることです。その中で、『育児を、みんなで育てよう』を合言葉に、ママ・パパ、企業・行政など「みんなで育児を育てていこうよ」と前のめりの人たちといっしょに進めていきたいなと思います。
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